大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)2444号 判決

本籍

金沢市鍛治町一四八番地

住居

金沢市上胡桃町四一番地の二

青写真焼付業

森田清作

明治二一年一二月二三日生

右の者に対する窃盗教唆、賍物寄蔵被告事件について昭和二六年八月一五日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人並びに原審弁護人梅山実明から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人梅山実明の上告趣意第一点について。

所論は、原判決の憲法三一条違反を主張するけれども、その実質は、擬律錯誤その他刑訴四一一条に該当する事由のあることを主張するに過ぎないから、上告の適法な理由にあたらない。なお、窃盗を教唆した者が、その賍物を寄蔵した場合には、所論のように、賍物寄蔵の罪は窃盗教唆の罪に吸収されるのではなく、両者の併合罪が成立するものと解すべきであるから、原判決の擬律に所論の違法もない(昭和二四年(れ)三六四号同年七月三〇日当裁判所第二小法廷判決参照)。

同第二点について。

裁判が迅速を欠き憲法三七条一項に違反したとしても、それは判決に影響を及ぼさないことが明らかであり、原判決破棄の理由とならないものであることは、当裁判所大法廷の判例とするところである(昭和二三年(れ)一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決)。従つて論旨は採用できない。

よつて刑訴施行法三条の二刑訴四〇八条に従い、裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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